親からの地代家賃収入は税金がかかる?

所得税法56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が…事業に従事したこと…により…対価の支払いを受ける場合には…必要経費に算入しない。…親族が支払いを受けた対価の額…は、…各種所得の計算上ないものとみなす。

という規定があります。

必要経費に算入しないということは、所得を減らさないので支払った額に相当する所得税を支払った者が支払わなければならないということであり、受け取った親族は収入がないことにされるのでその所得税を支払わなくてもよいということになります。

この規定がなければ、支払った側は所得が減少しその分の税負担がなくなりますし、受けたった側は所得が発生してその分の税負担が必要ということになります。

そこで生じる疑問と不安があります。

受け取ったお金は返却しなくてはいけないのか?返却しないこととすると、お金をもらっているのだから財産が増えたわけだから贈与税がかかるのではないか?

対価の授受がなく財産が増えたり利益を得たりした場合には贈与税がかかることが考えられますが、この規定はそのようなものではありません。

所得税法1条(趣旨)では、「所得税について…必要な事項を定める。」としていますので、所得税法では収入がなかったものとされるということです。ですから、民法第2章第7節(賃貸借)・第8節(雇用)・第10節(委任)の規定が適用されないということではありません。ですから、例えば、地代家賃として受け取ったもの、給与として受け取ったもの、報酬として受け取ったもの、は返却する必要はありませんし、贈与税がかかるということもありません。

所得税法56条の規定の適用については、平成16年6月9日東京高裁判決(平成15年(行コ)第209号事件)、平成16年11月2日最高裁判決(平成16年(行ツ)第23号事件)がありますから参考になります。この2つの訴訟と並行して贈与税の賦課決定処分がされたとしての争いの判決は確認できませんので、贈与税の賦課決定処分はされていないと思います。

この規定は、財産家が親族を使って財産の分配を行うのに便利であると考える方があるのではないでしょうか?

例えば、不動産所得がある方が、所得税法基本通達26-9(建物の貸付が事業として行われているかどうかの判定)の要件に該当しないけれども収入が多額にあって財産がたまって相続税の負担が大変であるというケースで、同居の推定相続人と管理委託契約等を結び、報酬を支払ったとします。

青色専従者給与を支払ったらどうなるか?事業程度の規模ではありませんので必要経費とすることはできません。

管理委託報酬として支払ったらどうなるか?同居の親族への支払いは必要経費とすることはできません。

しかし、考え方を変えれば、財産がありすぎて困っているわけですから、財産を推定相続人に与えて財産を減らしたいという望みは実現できているわけです。支払った財産家が税の負担をすればよいだけのことで,受け取った者は税金の負担をすることもなく財産が増えていくということになりますから、大変ありがたいということではないでしょうか!めでたし~めでたし~⁉