固定資産税の納税義務者

弟の居住用家屋が建っていた土地が、弟と母の共有となっていた。母はだいぶ前に死亡していたが、母の持ち分が相続税の基礎控除額以下ということもあり相続登記はしていなかった。

弟が死亡したのでこれを契機に母の持ち分を法定相続分で相続登記した。

弟の共有持ち分は、弟の唯一の相続人である娘の意向で娘への相続登記はしなかったので、弟名義は登記簿に残ったままであった。

弟が死亡するまでは家屋及び土地の固定資産税は、弟へ賦課決定されていた。

総務省のホームページでは、固定資産税は固定資産を使用し公共サービスを享受している者が負担するものであると説明されている。

突然、浜松市役所から、母の相続登記をした者のうち1名宛てに土地の固定資産税の賦課決定通知が届いた。浜松市役所資産税課へ説明を求めたところ、登記名義人あてに賦課決定通知を送る規則があるので、そのようにしていると回答があった。

土地の固定資産税の賦課決定先が弟から他の者へ変更されているということは、浜松市役所資産税課の担当者は弟が死亡していることを知っているということになる。にもかかわらず、建物の固定資産税は、死亡した弟宛てに賦課決定通知書を送ったという説明であった。要するに、登記をすると登記名義人へ固定資産税を賦課決定することにしているということで、登記をしなければ死亡した者へ賦課決定通知書を送付するということのようである。固定資産の利用実態とか相続登記をしていない民法上の所有者が誰であるかは、考慮しないようである。

地方税法343条では、固定資産税は所有者へ課税すると規定している。ので、相続人が相続登記をしていなくても単純承認していれば他の共有者とともに納税義務者となるはずである。

これについて、総務省の見解をまとめたものとしての解説書(固定資産税実務提要、ぎょうせい 出版)では、「共有者全員に納税通知書を送付する必要がある。」と説明している。

従って、相続登記をした母の相続人全員宛てに、及び相続登記をしていない弟の相続人宛てに、持ち分に応じた税額を記載した土地の固定資産税賦課決定通知書を送らなければならないことになる。浜松市役所資産税課の職員は、法律の遵守を規定した地方公務員法32条に違反していることになる。

地方税法10条及び10条の2では、共有者に対して連帯納税義務を課している。共有者の中で滞納する者がいる場合には、他の共有者に対して納税させることができるというものである。民法436条を準用していることから、履行の請求をすることができるというものであるから賦課決定処分には適用されない(地方税法総則逐条解説、地方財務協会 出版)とされている。国税通則法8条(国税の連帯納税義務についての民法の準用)の解説書(国税通則法精解、大蔵財務協会 出版)でも同様の説明をしている。浜松市役所資産税課の職員の説明では、共有者のうち1名を指定して固定資産税を全額納付するように賦課決定処分をする根拠が、地方税法10条及び10条の2であると説明しているので、ここでも法律の遵守に違反していることになる。

地方税法355条(固定資産税の納税管理人)では、土地家屋の所有者が他の市町に住所を有する場合には、納税管理人を指定して届け出しなければならないと規定している。浜松市役所資産税課では、この規定を適用しないで直接所有者へ賦課決定通知書を送付しているようである。私は、以前名古屋市に住んでいたが、現在住んでいる浜松市の土地の固定資産税賦課決定通知書は、登記していた名古屋市の住所へ直接届いていた。